VSO-VAP-SPEC-001 | バージョン 1.2.0 Draft 3 | 2026年9月

VAP — Verifiable AI Provenance Framework

AIのフライトレコーダー

航空機には飛行データを記録するブラックボックスがある。原子力発電所には詳細な監視システムがある。

しかし、毎秒数百万件の意思決定を行うAIシステムには? 改ざん検知可能な記録システムがほぼ存在しない。

VAPはこの問題の一部に対処する。

"Encoding Trust in the AI Age" ― AI時代の信頼をコード化する

提供元: VeritasChain Standards Organization (VSO)

なぜ今なのか?

規制環境とインシデント傾向が新しいアプローチを求めている

規制圧力

  • EU AI Act(附属書IIIは2027年12月2日から) ― 高リスクAIの自動ログ記録義務
  • MiFID II RTS 6 / RTS 25 ― アルゴリズム取引記録
  • GDPR 第22条 ― 自動化された意思決定(プロファイリングを含む)

インシデント増加

  • アルゴリズム取引によるフラッシュクラッシュ
  • 金融・医療でのAI判断紛争
  • 自動運転車事故

証拠の欠如

  • 改ざん検知性なし ― ログは検知されずに改変可能
  • 因果連鎖なし ― 判断フローを追跡不能
  • 第三者検証の手段なし ― 記録の完全性は運用者の申告に依存

VAPが埋める穴

改ざん検知

Merkleツリー + 外部アンカリング

因果追跡可能性

入力 → 判断 → 結果

法的証拠

検証可能な暗号学的証拠

VAPとは何か

暗号学的に検証可能なAI判断証跡のための分野横断メタフレームワーク

定義

VAP(Verifiable AI Provenance Framework)は、あらゆる高リスクAIシステムに共通する「暗号学的に検証可能な判断証跡(Provenance)」の構成要件を規定する、分野横断の上位フレームワークです。

核心メッセージ

VAPは「AIを止める規制」ではない。
VAPは「AIを安全に継続運用するための証跡インフラ」を標準化するものです。

重要: VAPは単独では機能しない

VAPは実装規格ではない。

実際の実装は各ドメインプロファイルが担う: VCP(金融)、MAP(医療)、DVP(自動車)、EIP(エネルギー)、PAP(公共政策)、IAP(産業)、CAP(コンテンツ/クリエイティブ)、CPP(キャプチャ)。ステータス(VAP v1.2 §4.5.2 のレジストリ):VCP v1.2 Released/CAP v1.0・CPP v1.4 リリース済み/OAP v0.1.1・MAP v0.1.2 Working Draft/PAP 部分ドラフト(Track B v0.2.0)/IAP 発表済み/DVP・AAP・EIP 計画中。IAP・DVP・AAP・EIP の仕様書はまだ存在しません。

VAPファミリーの提案プロファイルとして、VAP-LAP(Legal AI Profile)も紹介しています。個人Internet-Draft -05の概要と、AILEXの製品リファレンスをご覧いただけます。

適用例(設計提案・非規範。プロファイルではありません): AIセキュリティ調査の監査証跡・証拠設計 — OAPプロファイルと、分野横断のケイパビリティであるDAPの組み合わせ。

限界:VAPにできないこと(VSO のAI事件の検証記録で繰り返し現れるパターンごとの整理)。

実装状況

2026年10月25日時点で、VAP または VAP プロファイルの外部実装はゼロ、手続で受理された Evidence Pack もゼロです。以前に公表した有償契約の件数は、一次記録との照合が済むまで2026年10月24日に取り下げました。これは件数がゼロだという意味ではありません。

Working Draft の本文はまだ公開していません。OAP、MAP、PAP(Track B)と、分野横断のケイパビリティである DAP・SMP の本文は、VSO のどのリポジトリでも公開されていません。レジストリが示すのは各文書のステータスであり、入手できるかどうかではありません。

日付入りの訂正(英語) · 訂正記録

VAPは「満たすべき最低条件」を規定する。

VAPは「インターフェース契約」、ドメインプロファイルは「実装」と考えてください。

適用対象

VAPの適用対象は明確:「バグったら、人か社会が真面目に死ぬ/詰む」領域

システム障害が人命・社会基盤・民主的制度に不可逆的な損害をもたらしうる領域が対象です。

対象ドメイン

AIの判断過程をたどれることが重要な領域

金融

VCP

VeritasChain Protocol

アルゴリズム取引の監査証跡、HFTシステム、AI駆動取引戦略

v1.2 リリース済み

医療

MAP

Medical AI Profile

AI診断支援システム、画像診断、治療推奨

MAPを見る

自動車

DVP

Driving Vehicle Profile

自動運転(L3-5)、ADAS、航空AI、ドローン制御

DVPを見る

エネルギー

EIP

Energy Infrastructure Profile

スマートグリッドAI、電力網管理、重要インフラ

EIPを見る

公共政策

PAP

Public Administration Profile

与信スコアリング、福祉判定、入国管理AI、採用アルゴリズム

PAPを見る

産業

IAP

Industry Accountability Profile

業界特化のVAP拡張、業界別ガバナンス、規制準拠

IAPを見る

コンテンツ / クリエイティブ

CAP

Content / Creative AI Profile

ゲーム、映画、アニメ、出版、音楽 ― AI使用の暗号学的証跡

CAPを見る

キャプチャ証跡

CPP

Capture Provenance Profile

メディアキャプチャ検証 ― いつ、どこで、誰が撮影したかを検証可能に

CPPを見る

法律AI

VAP-LAP

Legal AI Profile

法律相談への応答、書面の下書き、ファクトチェック、人による確認を、たどれる証跡につなぐ提案。

提案プロファイル
VAP-LAPを見る

共通点

すべての領域において、AI判断の透明性と追跡可能性は「あれば良い」ではなく「なければ文明が機能しない」必須要件です。

  • 不可逆的な結果
  • 社会全体への影響
  • 人間の介入が間に合わない速度

アーキテクチャ階層

VAP / VSO / ドメインプロファイル ― 3層の標準化構造

VAP(Verifiable AI Provenance Framework)

概念・上位フレームワーク

全ドメイン共通の最低要件を定義 ― AI判断証跡の抽象レイヤー

策定・維持

VSO(VeritasChain Standards Organization)

標準化組織

VAPを策定・維持する組織 ― VSOは認証を行わず、証明書はVSOが承認した適合性評価機関(CAB)が発行

プロファイル公開

各領域のプロファイルと提案

技術基盤

技術的な構成要素。VAP v1.2のアーキテクチャ(§3.1)は、Integrity・Provenance・Traceability・Accountability・Domain Profiles の5レイヤーで構成されます

1

暗号基盤レイヤー

Cryptographic Primitives

  • 暗号学的なシーケンス検証可能性 ― Merkle包含証明とPrevHashのいずれか、または両方。PrevHashはフレームワークレベルでは任意(INT-004a)
  • デジタル署名 ― Ed25519(デフォルト)。ML-DSA(FIPS 204)はEXPERIMENTAL
  • Merkleツリー ― 大規模環境での効率的な検証
2

Provenanceレイヤー

判断由来

  • Actor ― 誰が判断したか
  • Input ― 何を入力として使ったか
  • Context ― どのような環境・制約下で
  • Action ― 何を決定したか
  • Outcome ― 結果はどうだったか
3

時間整合性レイヤー

Temporal Integrity

  • UUID v7 ― 時刻埋め込み識別子
  • IEEE 1588-2019(PTP) ― 精密時刻同期
  • TSAアンカリング ― 外部タイムスタンプ局
4

Crypto Agility

暗号移行性

  • ポスト量子署名(実験的) ― Ed25519とML-DSA(FIPS 204)の任意のハイブリッド署名。ML-DSAはEXPERIMENTALで、認証要件ではありません
  • アルゴリズム識別 ― 必須タグフィールド
  • スムーズな移行 ― ハイブリッド署名サポート

共通コア(Shared Assurance Core)

すべてのVAPドメインプロファイル(VCP、MAP、DVP、EIP、PAP、IAP、CAP、CPP)は共通の暗号基盤を共有

提案プロファイルのVAP-LAPは、これらの仕組みを法律AIに適用する設計です。対応関係は個人Internet-Draft -05に記述されています。

1つのコア、複数のプロファイル ― ドメインプロファイルはVAPを拡張するが、共通コアを置き換えることはない。

正規シリアライゼーション

JCS (RFC 8785) ― 実装間で一貫したハッシュを実現する決定論的JSONシリアライゼーション。

EventID

UUIDv7 ― 時間順序付きユニーク識別子。時系列順序とグローバル一意性を実現。

暗号学的シーケンス検証可能性

SHA-256(デフォルト)/ SHA3-256 ― Merkle包含証明とイベントごとのPrevHash連結のいずれか、または両方により、イベントの順序と所属を検証可能にします(INT-004)。PrevHashはフレームワークレベルでは任意です(INT-004a)。

Merkleバッチ処理 / アンカリング

Merkleツリー ― バッチ検証と、署名付きMerkleルートの外部アンカリング(TSA・透明性ログ・パブリックブロックチェーン)。v1.2ではすべての適合レベルで必須です(INT-006)。各アンカーレコードはイベント件数、最初と最後のイベントID、ポリシーIDを束縛します(Completeness Invariant、INT-008)。

署名スキーム / 鍵モデル

Ed25519(デフォルト)+ ML-DSA(FIPS 204、EXPERIMENTAL) ― 鍵ライフサイクルを定めた従来型の署名と、ハイブリッド運用向けの実験的なポスト量子署名。

証明フォーマット

標準化されたVerify手順 ― ドメイン横断の相互運用性のための定義済み証明構造と検証アルゴリズム。

共通コアと各領域のプロファイル

共通コア(Shared Assurance Core)がVAP共通の要件を定めます。各プロファイルのステータスと対応関係は、それぞれの文書をご覧ください。

なぜ「説明可能AI(XAI)」では不十分なのか

説明 ≠ 検証 ― 根本的な違いを理解する

観点 Explainable AI(XAI) Verifiable AI(VAP)
答える問い なぜその判断をしたか? その判断が本当に行われたと検証できるか?
提供するもの 事後的な解釈 暗号学的な証拠
改ざん検知性 なし Merkle証明と外部アンカーによる検知
類似 「パワポで説明します」 「ブラックボックスのデータです」
証拠の種類 説明であり、独立して検証できない 検証可能な暗号学的証拠(その証拠としての評価は裁判所や当局が行う)

XAIは「なぜ?」に答える ― VAPは「本当に起きたか、検証できるか?」に答える

規制対応

VAPは現行および新興の国際規制に関連する証拠を生成するよう設計されています

EU AI Act Article 12

高リスクAIの自動ログ記録義務

MiFID II RTS 6 / RTS 25

アルゴリズム取引の記録要件

GDPR

データ保護と削除権(Crypto-shredding)

US CAT Rule 613

統合監査証跡

NIS2 Directive

重要インフラセキュリティ

FDA AI/ML SaMD

医療AIデバイスガイダンス

標準化ロードマップ

国際的な認知と採用に向けた道筋

2026年 提出済み

IETF 個人Internet-Draft

draft-kamimura-vap-framework-02(有効な個人提出)― いずれのIETFワーキンググループにも採択されておらず、IETF上の地位はありません

2026年 予定

ISO/TC 68(金融サービス)標準化活動

金融サービス標準化のためのISO技術委員会との連携

2026-2027年 予定

ISO/IEC JTC 1/SC 42(AI)整合

国際AI標準委員会との調和

2027年以降 検討中

IEEE Standards Association

IEEE標準化トラックの可能性

ガバナンス:仕組みによる中立性

VSOはAI判断証跡の標準化組織としてVAPを策定・維持しています

VSOはW3C、IETF、IEEE、FIXと同じ層で活動します ― ルールを定義し、認証は自ら行いません。これは構造上の比較であり、同等の地位・承認・採用を主張するものではありません。

VSO:ルール策定のみ

  • 仕様の策定・維持
  • 適合性要件の定義
  • 監査・認証は行わない

CAB:認証担当

  • スキームは、CABがスキームオーナーから独立していることを要求します。登録されているCABはVeritasChain株式会社のみであり、スキームオーナーから独立していません
  • 実際の監査と認証書発行
  • ルール策定と認証の分離

オープンスタンダード

  • VAP/VCP仕様は無料公開(CC BY 4.0)
  • 実装にライセンス料不要
  • GitHubで完全オープンソース

インターネットプロトコルのIETF、Web標準のW3Cのように、

VSOはルールを提供する ― ビジネスではない。

「飛行機にはフライトレコーダーがある。AIにも必要な時が来た。」

— VeritasChain Standards Organization

VAP Framework SpecificationはCC BY 4.0 Internationalでライセンスされています