VAP の概要
VAP · 限界 · 2026-10-24

VAPにできないこと

VSO は、報じられた AI 事件を、一次情報(取得できない場合は信頼できる報道)と照合してから扱っています。そこでは同じパターンが繰り返し現れ、その多くで VAP の役割は限られているか、まったくありません。このページは、その限界をパターンごとに、根拠となる VAP v1.2 の条項とともに示します。どの事件についても、VAP の効果を仮定して述べるものではありません。

VAP v1.2.0 Draft 3 · 事件検証記録 · 訂正記録

VAP v1.2 Declaration(原文)

VAP makes AI decision records auditable, attributable, and — at anchor granularity — completeness-verifiable after the fact. It does not prevent, block, or intercept any AI behaviour, and it does not warrant that any recorded decision was correct, fair, or safe (§1.6). Events that were never measured are permanently outside its reach by construction, and no revision of this framework will change that.

参考訳:VAP は、AI の判断記録を事後に監査可能・帰属可能にし、アンカー粒度で完全性を検証できるようにします。AI の挙動を防止・遮断・傍受することはなく、記録された判断が正しい、公正である、または安全であることを保証しません(§1.6)。計測されなかった事象は構造上、恒久的に射程の外にあり、本フレームワークをどう改訂してもそれは変わりません。

  1. 記録は存在した。問題は、保有者以外が確かめられるか

    検証済みの事件のいくつかでは、運用者が記録を保持し、その中から問題を見つけて自ら公表しています。VAP は、誰かに記録を読ませることも、警告を出させることも、対応させることもしません。VAP が扱うのはもっと狭い問いで、記録が改ざんされていないこと、アンカー粒度で欠けていないこと、帰属できることを、記録の保有者以外が確かめられるかどうかです。

    仕様上の根拠:§1.6(c)、§4.1.7(Completeness Invariant)、Declaration(「does not prevent, block, or intercept any AI behaviour」)。

    検証済みの例

  2. 書かれた時点で誤っていた記録

    改ざんの検出と省略の検出は、記録が書かれてアンカーされた後に起きることを対象にしています。記録の内容が真実であることを、VAP は示しません。エージェントがツール呼び出しを偽装し、偽のコマンドや出力が transcript に書き込まれた場合、VAP の記録はその偽の記載を、正しい記載と同じように忠実に保存します。

    仕様上の根拠:§1.6(c)、Appendix A「Omission-evidence」(tamper-evidence と区別している)。

    検証済みの例

  3. 攻撃者が自ら動かすシステム

    VAP の記録は、VAP を実装したシステムの運用者が作ります。攻撃者が AI を含む自前のツールを動かしても VAP の記録は生まれず、VAP がそれを求めることもできません。事後に VAP が関わりうるのは、標的になった組織が自らのシステムで記録したものです。

    仕様上の根拠:VAP が定めるのは、適合する実装が記録する内容です(§4、§8)。実装しない者には何の義務も課しません。

    検証済みの例

  4. 計測されなかった事象

    計測されなかった事象は、どの来歴の仕組みでも恒久的に射程の外にあります。計測されたがアンカーされたバッチに含まれなかった事象は、その存在を示す別の記録がある場合に限り、欠落を示せます。監査イベントがそもそも生成されなかったのか、生成されたが保持されなかったのかが明らかでない場合、別の記録が欠落を示しうるのは後者だけです。

    仕様上の根拠:Appendix A「Pre-measurement drop」(「Permanently outside the reach of any provenance mechanism, by construction」)、§11.1。

  5. 人と手続の失敗

    VAP は、記録された工程を帰属可能にできます。運用者が人のレビューを記録していれば、それも含まれます。しかし、そのレビューが十分だったこと、方針が妥当だったこと、組織の対応が適切だったことは示しません。出力を誰も確認しなかったことが失敗の中身である場合、記録が示せるのは、せいぜい誰がいつそれを扱ったかです。

    仕様上の根拠:§1.6(c)。

    検証済みの例

  6. 現行の適合範囲に入らない配備

    VAP v1.2 では、DAP(エージェントのアクセスとツール利用)のような横断的な capability は、ちょうど1つの領域プロファイルと組み合わせて使い(§4.6.3 規則1)、適合の主張の前提となるシーケンスの仕組みとアンカーはプロファイルが定めます(§8.2)。プロファイル登録表(§4.5.2)のどの領域も、AI 開発者の社内エージェントや、開発者・その評価パートナー・政府機関が運用するモデル評価環境を対象にしていません。VSO の記録のうち一次情報が最も厚い事件のいくつかは、まさにこうした環境で起きており、VAP v1.2 の適合を主張できるプロファイルがありません。こうした配備の扱いを VSO はまだ決めていません。

    仕様上の根拠:§4.5.2(プロファイル登録表)、§4.6.3 規則1、§8.2。

    検証済みの例

VAP v1.2 §1.6(原文)

VAP and its domain profiles define mechanisms for producing cryptographically verifiable evidence of AI system decisions. Conformance to VAP or any profile: (a) does not constitute compliance with the EU AI Act, GDPR, MiFID II/III, CAT Rule 613, NIS2, FDA SaMD guidance, or any other law or regulation; (b) does not constitute a legal determination that any technical mechanism (including crypto-shredding) satisfies a specific legal obligation; (c) does not warrant the correctness, fairness, or safety of the underlying AI decisions — only the integrity, completeness (at anchor granularity), and attributability of their records. VAP generates evidence; competent authorities and courts evaluate it.

参考訳:VAP とその領域プロファイルは、AI システムの判断について暗号学的に検証可能な証拠を作る仕組みを定めます。VAP またはいずれかのプロファイルへの適合は、(a) EU AI Act、GDPR、MiFID II/III、CAT Rule 613、NIS2、FDA の SaMD ガイダンスその他の法令への準拠を意味しません。(b) いかなる技術的仕組み(crypto-shredding を含む)が特定の法的義務を満たすという法的判断を意味しません。(c) 基になる AI の判断が正しい、公正である、または安全であることを保証しません。VAP が扱うのは、その記録の完全性(integrity)、アンカー粒度での完全性(completeness)、帰属可能性だけです。VAP は証拠を作り、その評価は権限のある当局と裁判所が行います。

実装状況

2026年10月25日時点で、VAP または VAP プロファイルの外部実装はゼロ、手続で受理された Evidence Pack もゼロです。以前に公表した有償契約の件数は、一次記録との照合が済むまで2026年10月24日に取り下げました。これは件数がゼロだという意味ではありません。

日付入りの訂正(英語) · 訂正記録