権限と範囲
誰が、どの対象と操作を認めたのか。実行時に、どの版のルールが適用されたのか。
社内でAIに作業を任せた記録と、対象組織から得た許可は、別のものです。
「古いプラグインを検出しました」
何を根拠に、どこまで確認した結果なのかは分かりません。
どの応答の、どの表記を、どの情報と照合したのか。未確認条件も含めて確認できる。
合成データ 暗号学的検証は未実施です。表示例の全体を見る
AIが「問題を発見した」と報告しても、それだけでは次の四つが分かりません。
誰が、どの対象と操作を認めたのか。実行時に、どの版のルールが適用されたのか。
社内でAIに作業を任せた記録と、対象組織から得た許可は、別のものです。
URLを、どのように発見したのか。何を実際に取得したのか。
判断の材料が、どのURLから、いつ、どの経路で得られたのかも、記録の一部です。
何を観測し、何を推測したのか。評価が訂正されたとき、元の判断と変更理由を追えるのか。
観測した事実、参照した情報、未確認の条件を区別しなければ、推測が事実のように伝わります。
許可・拒否の判断と、実際の通信は一致しているのか。
判断と実行が一致していたかは、両方の記録を照らし合わせて初めて確かめられます。
調査を認めた記録、取得前の判断、実際の通信、技術評価、対象企業への通知判断は、それぞれ異なる記録です。
たとえば、ある操作を「許可」とした判断の記録は、その操作が判断どおりに実行されたことを示しません。反対に、通信の記録だけでは、その通信が認められた範囲の中で行われたかどうかは分かりません。
VAP(Verifiable AI Provenance Framework)は、AIの判断・行動の記録を事後に検証できるようにするための、分野をまたぐ共通の枠組みです。VAP v1.2には、第三者が公開したWeb資料の観測を扱うOAPと、委任された権限の下でのエージェントの行動を扱うDAPが、どちらもWorking Draft(作業草案)として登録されています。
第三者が公開し、ネットワーク経由で取得したWeb上の資料について、どのURLで観測したかの来歴を扱います。後から争われたり、削除・編集・否認されたりしうる資料の記録が対象です。
プリンシパルから委任された権限の下での、エージェントのアクセス、ツール呼出し、操作、データ移転の来歴を扱います。特定の分野に限定されず、領域プロファイルと組み合わせて使います。
どちらも、次の共通保証コアの要件を引き継ぎます
整合性・来歴・追跡可能性・説明責任の各レイヤー、外部アンカー(INT-006)、アンカー単位で欠落やスプリットビュー(相手ごとに異なる記録の提示)を検出可能にする完全性不変条件(INT-008)など、すべてのプロファイルとケイパビリティが引き継ぐ要件です。
セキュリティ調査に適用する場合、次の情報を観測記録・委任記録と結び付けることを検討しています。どの記録に、どの形で持たせるかは決まっていません。
左は VAP v1.2 に記載されていること、右はこのページ独自の適用提案です。右側は、OAP・DAP・VAPの定義ではありません。
OAPは、第三者がWeb上に公開した資料をURLで観測した記録の来歴を扱う領域プロファイルです(§2.2.6、§5.4)。観測範囲の宣言(ObservationScopeManifest)と、試行の結末を記録させる不変条件(Invariant OAP-1)への言及があります(§5.4。定義はOAP本文によります)。
URLの発見経路と、製品・版の観測根拠を、観測記録に結び付けます。
DAPは、プリンシパルから委任された権限の下での、エージェントのアクセス、ツール呼出し、操作、データ移転の来歴を扱う分野横断のケイパビリティです(§4.6.2)。VAPの責任スキーマには、委任者・受任者・範囲・有効期間からなる委任の連鎖(delegation_chain)があります(§4.4.3)。
社内からエージェントへの委任と、対象組織から得た許可を、別々の記録として扱います。
1つの導入は、領域プロファイル1つと、宣言したケイパビリティ0個以上で構成し、制約が重なる場合は厳しい方を適用します(§4.6.3)。OAPは、取得を自律エージェントが行う場合にDAPと組み合わせます(§4.6.4、§5.4)。
調査の六つの工程(範囲の設定、委任、取得前の判断、観測・取得、技術評価、通知・訂正・引継ぎ)に沿って、OAPとDAPの記録を結び付けます。
VAPのポリシー識別(policy_id、§7.1)は、イベントを生成した検証ポリシーを識別するものです。調査の許容・禁止ルールを表すものではありません。
調査ルール(対象、許容・禁止操作、適用期間)の版を、委任記録と取得前の判断記録から参照します。
外部アンカーは、すべての適合レベルで必須です(INT-006)。アンカーしたバッチについて、アンカー後の欠落やスプリットビュー(相手ごとに異なる記録の提示)を第三者が検出できることが求められます(完全性不変条件、INT-008)。一度も記録されなかった事象には及びません(付録A)。
検証を実装する際は、信頼する記録元、外部への固定方法、検証対象の範囲を明示します。
来歴の抽象モデル(actor・input・context・action・outcome、§4.2.2)と、上書き履歴(override_history、§4.4.3)があります。VAP v1.2本文には、セキュリティ評価や通知判断に固有の記録の定義はありません(OAP・DAP本文は未確認)。
観測事実、参照情報、該当可能性、未確認条件、通知判断、訂正理由を、それぞれ別の記録として扱います。
VAPやプロファイルへの適合は、法令の遵守を意味せず、記録された判断の正しさ・公正さ・安全性を保証しません。対象は、記録の整合性、アンカー単位の完全性、帰属に限られます(§1.6)。VAPは、AIの動作を阻止・遮断しません(宣言部)。
証拠の仕組みと実行制御を、別の仕組みとして設計します。
以下は、記録を結び付ける工程の適用案です(本ページの提案)。各工程の「関係する仕様要素」には、VAP v1.2に記載がある範囲だけを示しています。
調査を行う組織の中で、誰が、どのエージェントに、どの範囲の作業を任せたか。委任の変更や取消しも記録します。DAPが扱う「委任された権限の下での行動」に対応させる想定です(本ページの提案)。
対象企業が、どの範囲・期間の検査を認めたか。許可書や契約の版と結び付ける、別の記録です。
社内の委任は、第三者のシステムにアクセスする権限を生みません。対象組織の許可を前提とする操作(たとえば、許可・契約に基づく追加診断)は、その許可の記録と結び付けて扱い、社内の委任記録で代えることはしません。
実行制御は、操作の範囲をシステム側で強制する。
証拠の仕組みは、その判断と実行について事後確認できる記録を生成する。
証拠の記録だけでは、禁止された操作を防げません。VAPは事後検証のための枠組みであり、AIの動作を阻止・遮断するものではありません(VAP v1.2 宣言部)。禁止された操作を防ぐには、実行制御が別に必要です。
架空の対象と合成データによる表示例です。実在する企業・URL・脆弱性情報は含みません。この表示は説明のための静的なもので、署名やハッシュ値の検証は行っていません。
| データ種別 | 合成データ |
|---|---|
| 対象 | 架空の公開Webサイト https://shop.example/(.example は例示用に予約されたドメイン名です) |
| URLの由来 | 公開HTML内の参照(トップページのHTMLが読み込むスクリプトの参照) |
| 適用ルール | デモ用調査ポリシー demo-policy 第3版(架空) |
| 観測内容 | プラグイン名と版らしい表記 demo-gallery 2.3.1 |
| 照合結果 | デモ用アドバイザリ DEMO-ADV-0001(架空)の影響範囲「2.4.0未満」と一致 |
| 未確認事項 | 実稼働コードの版、個別修正の有無、該当機能の利用状況 |
| 評価 | 条件付きの問題候補 |
| 通知状態 | 未送信 |
| 暗号学的検証 | この表示例では未実施 |
記録IDはすべて説明用の架空の値です。OAP・DAPの正式なイベント名やフィールド名ではありません。この一覧を開いても、署名の検証、外部アンカーとの照合、改ざんの検出は行われません。
将来、改変・省略・差し替えの検出を実装する場合は、少なくとも次の三点を明示します(本ページの提案)。
どの主体の、どの署名鍵による記録を、検証の起点とするか。
記録の要約値を、どの外部サービス(タイムスタンプ局、透明性ログなど)に、どの頻度で固定するか。VAP v1.2では、外部アンカーはすべての適合レベルで必須です(INT-006)。
どのバッチ・期間・種類の記録を検証したか。アンカー後の欠落やスプリットビューは検出の対象になりえますが、一度も記録されなかった行動は検出できません(VAP v1.2 §4.1.7、付録A)。
VAP v1.2は、第三者がオフラインで検証できる一式(Evidence Pack:イベント、監査パス、アンカー記録、外部アンカーの証明、公開鍵、ポリシー文書など)を推奨しています(§9.3)。本ページの表示例は Evidence Pack ではありません。
この証拠設計を評価するときの前提です。設計の一部として読んでください。
| 設計が目指すこと | それだけでは保証しないこと |
|---|---|
| 保存記録の改変を検知できること | 観測内容が、現実を完全・正確に表していること |
| 判断と根拠をたどれること | 脆弱性が実在すること、悪用が可能であること |
| 委任と操作の記録を照合できること | 対象企業から許可を得ていること、調査が適法であること |
| 宣言した範囲の証拠を検証できること | 計測・記録されていない行動が存在しなかったこと |
後からハッシュ値を付けるだけでは、調査前に承認記録が存在したことまでは示せません。本設計では、承認記録と実行記録を外部アンカーに結び付け、どの時点までに記録が存在していたかを確認する方法を検討します。承認者の権限や承認の有効性は、別途確認が必要です。
本提案は、調査記録を事後検証するための証拠設計です。対象へのアクセス権限を付与するものではなく、脆弱性の成立、法令遵守、独立認証を保証するものでもありません。
仕様上の位置づけ:VAPやプロファイルへの適合は法令の遵守を意味せず、記録された判断の正しさを保証しません(VAP v1.2 §1.6)。一度も計測されなかった事象は、仕組みの上で検証の対象外です(VAP v1.2 付録A)。
EVIDECTは、VeritasChain株式会社が開発しているセキュリティ調査サービスです。公開情報等から問題の可能性を調べる過程に、観測・委任・評価・通知の記録を結び付ける設計を検討しています。
本ページで紹介するVAP・OAP・DAPへの対応は、適用設計の提案です。実装状況、試験結果、適合評価の有無は、それぞれ確認できる資料とともに示します。
いいえ。証拠を検証して確かめられるのは、記録が後から改変されていないかや、所見が元の観測・判断とどう結び付いているかです。脆弱性が実在することや悪用できることは、この設計だけでは保証しません。
どちらもVAP v1.2.0 Draft 3に登録されたWorking Draftです。OAP(Observed Artifact Provenance)は、第三者が公開したWeb上の資料をURLで観測した記録の来歴を扱う領域プロファイルです。DAP(Delegated Access Provenance、通称VAP-AGENT)は、委任された権限の下での、エージェントのアクセス、ツール呼出し、操作、データ移転の来歴を扱う分野横断のケイパビリティです。
社内の委任は、第三者のシステムにアクセスする権限を生みません。本設計では、社内の委任と対象組織の許可を別の記録として扱います。また、本設計はアクセス権限を与えるものでも、調査の適法性を保証するものでもありません。
防げません。VAPは事後検証のための枠組みで、AIの動作を阻止・遮断するものではありません。禁止された操作を防ぐには、操作の範囲をシステム側で強制する実行制御が別に必要です。
いいえ。EVIDECTはVeritasChain株式会社が開発中のサービスで、VAP・OAP・DAPによる証跡統合は設計段階です。公開された適合試験結果や独立した検証結果はありません。
VAP仕様書に記載された標準化の窓口(standards@veritaschain.org)にお送りください。いただいたご意見は、VAPや各プロファイルの規範的な変更を意味しません。
本ページが参照した資料と、関連する成果物の公開状況です。状態は文字で示しています。
この適用設計について、たとえば次の観点のご意見を受け付けています。
いただいたご意見は、VAPや各プロファイルの規範的な変更を意味しません。仕様の変更は、VSOの変更管理の手続き(VAP v1.2 §10.3)によります。