ステータス: v0.1.2 ワーキングドラフト イベント名・フィールド名・不変条件の定式化は暫定的であり、本番環境での適合主張には使用できません。仕様への貢献・フィードバックを歓迎します。
VAPプロファイル: 医療・ヘルスケアAI

MAP Medical AI Profile

"From Black Box to Glass Box" ― AIの診断根拠を、検証可能に。

「AIが『がんです』と言った。なぜ?
その根拠を、暗号学的に検証可能にする。」

プロファイルID: MAP
上位フレームワーク: VAP
リスクカテゴリ: 生命関連

AI画像診断は、放射線科医と同等以上の精度で病変を検出できるようになった。 しかし、AIが「陽性」と判断した根拠は、多くの場合ブラックボックスのままだ。

患者が訴訟を起こしたとき、「AIがそう言ったから」は通用しない。 規制当局が監査を求めたとき、「ログは残っていない」は許されない。

MAPは、医療AIの全ての判断を暗号学的に記録するよう設計されており、 「いつ、どのデータを見て、どのモデルが、なぜその診断に至ったか」を 改ざん検知可能な形で検証可能にする。

なぜMAPが必要なのか

医療AIの現状と課題

説明責任の欠如

「AIが判断した」だけでは、医療過誤訴訟で防御できない。判断根拠の記録が必須。

モデルドリフト

再学習により性能が変化。どのバージョンのモデルが診断したか追跡不能。

規制対応の複雑化

MDRは市販後調査(第83〜86条)を要求し、EU AI Actは高リスクAIシステムの市販後モニタリングを定めている(第72条。附属書I経路のシステムへの高リスク規定の適用は2028年8月2日から)。FDAのPCCP(事前変更管理計画)は任意の仕組みで、計画したモデル変更とその検証方法を事前に定めるものである。MAP(v0.1.2 ワーキングドラフト)は、臨床AIの判断記録を改ざん検知可能にする方法と、アンカーされたバッチごとに、宣言されたスコープ内の記録がアンカー後に欠落していないことを第三者が事後検証する方法を、暫定的に定めている。

課題事例(例示)

1 AI診断の見落とし訴訟

患者 AI画像診断「異常なし」 6ヶ月後がん発覚 訴訟

問われた質問:

  • ・「AIは本当に画像を見たのか?」
  • ・「モデルのバージョンは?」
  • ・「判断時の信頼度スコアは?」

結果:証拠不十分で和解

2 臨床試験データ不正

第三者試験機関 データ改ざん FDA警告書 承認取り消し

判明した問題点:

  • ・「いつデータが変更されたか証明不能」
  • ・「監査証跡が管理者により操作可能」

MAPの適用範囲

対象システムと記録対象イベント(構想段階の概観。v0.1.2 ワーキングドラフトの対象は診断支援・画像AI・トリアージ・アンビエント文書作成・保険適用判断で、手術ロボットの制御ループは先送り)

対象システム

🩺

AI診断支援システム

画像診断AI、ECG解析AI

必須
🔬

病理AI

デジタル病理、細胞診AI

必須
💊

投薬推奨AI

薬物相互作用チェック、用量最適化

必須
🏥

トリアージAI

救急優先度判定、ICUアラート

必須
🤖

手術支援ロボット

判断支援コンポーネント

推奨
📊

臨床試験AI

患者スクリーニング、エンドポイント評価

推奨

記録対象イベント(因果連鎖)

患者データ入力

画像/検査値

患者履歴

同意情報

AI解析

特徴抽出

モデル推論

説明因子

診断生成

分類結果

信頼度

鑑別診断

治療計画

推奨治療

リスク評価

代替案提示

患者転帰

実際の結果

フォローアップ

予後データ

MAPアーキテクチャ

データフローとイベント構造

データフロー

臨床システム

患者データ

AIモデル(SaMD)

臨床判断

MAP Recorder(サイドカー)

← 全判断イベントを記録

ハッシュチェーン

暗号学的に連鎖

デジタル署名

Ed25519署名

モデルハッシュ

バージョン特定

監査ストレージ

暗号化保存(HIPAA/GDPR要件を想定した設計)

イベント例(初期コンセプト。MAP v0.1.2 のスキーマではありません)

{
  "event_id": "019234ab-7c8d-7def-8123-456789abcdef",
  "timestamp_ns": 1734567890123456789,
  "event_type": "DIAGNOSIS_GENERATED",
  "facility_id": "HOSPITAL_XXXXX",
  "provenance": {
    "actor": {
      "type": "AI_MODEL",
      "identifier": "chest_xray_classifier_v2.1.3",
      "model_hash": "sha256:abc123...",
      "training_date": "2024-06-15",
      "fda_clearance": "K123456"
    },
    "input": {
      "patient_id_hash": "hmac-sha256:keyed_commitment...",
      "image_study_uid": "1.2.840.113619.2.55...",
      "input_hash": "sha256:def456...",
      "acquisition_timestamp": 1734567800000000000
    },
    "context": {
      "clinical_indication": "CHEST_PAIN_EVALUATION",
      "referring_physician_id": "NPI_XXXXXXXXXX",
      "prior_studies_reviewed": 3,
      "patient_age_range": "60-69",
      "active_protocol": "EMERGENCY_TRIAGE"
    },
    "action": {
      "diagnosis": "PNEUMONIA_SUSPECTED",
      "confidence": 0.87,
      "explainability": {
        "method": "GRADCAM",
        "attention_regions": ["RIGHT_LOWER_LOBE"],
        "contributing_factors": [
          {"factor": "consolidation_pattern", "weight": 0.45},
          {"factor": "air_bronchograms", "weight": 0.32}
        ]
      },
      "differential_diagnoses": [
        {"diagnosis": "ATELECTASIS", "confidence": 0.08},
        {"diagnosis": "LUNG_CANCER", "confidence": 0.03}
      ],
      "recommended_action": "CONFIRM_WITH_CT"
    }
  },
  "prev_hash": "sha256:789xyz...",
  "signature": "ed25519:..."
}

規制対応マッピング

国際規制との対応関係

国際規制との対応表

規制 管轄 要件 MAP設計目標(ドラフト)
EU AI Act 第6条1項・附属書I-A EU MDR/IVDRで第三者適合性評価(ノーティファイドボディ)を要する機器の安全コンポーネントであるAI、またはそれ自体が当該機器であるAIは高リスク。ログ記録(第12条)は2028年8月2日から適用 設計目標(ドラフト)
FDA ドラフトガイダンス「AI対応機器ソフトウェア機能:ライフサイクル管理」(2025年1月) 米国 ライフサイクル管理・性能監視に関する推奨事項(ドラフト・拘束力なし) 設計目標(ドラフト)
FDA PCCP 米国 所定変更管理計画、モデル変更の追跡 設計目標(ドラフト)
MDR 2017/745 EU 医療機器のトレーサビリティ 補完
21 CFR Part 11 米国 電子記録・電子署名、監査証跡 設計目標(ドラフト)
HIPAA 米国 PHI保護、アクセスログ Crypto-Shredding対応
GDPR EU 忘れられる権利、データ最小化 Crypto-Shredding対応
薬機法 変更計画確認手続(IDATEN) 日本 AI活用プログラム医療機器の市販後変更計画 対応予定

FDA 21 CFR Part 11 に関する設計目標(ワーキングドラフト。適合の主張ではありません)

監査証跡(Audit Trail)

記録されたイベントをハッシュチェーンで連鎖

電子署名の紐付け

Ed25519署名で操作者を特定

記録の完全性(改ざん検知)

暗号学的ハッシュによる改ざん検知

タイムスタンプの正確性

UUID v7 + NTP/PTP同期

システム管理者の操作制限

外部アンカリングにより管理者による削除も検知可能

ALCOA+原則との対応

ALCOA+原則 説明 MAP設計目標(ドラフト)
Attributable 誰が記録したか actor.identifier + 署名
Legible 読み取り可能 標準JSON形式
Contemporaneous 同時記録 リアルタイムログ生成
Original 原本性 ハッシュチェーンで検証可能
Accurate 正確性 入力データハッシュで検証
Complete 完全性 イベント欠落をチェーン断裂で検知
Consistent 一貫性 trace_idによる関連付け
Enduring 恒久性 改ざん検知可能・暗号学的に検証可能
Available 可用性 標準APIでアクセス可能

プライバシー保護:Crypto-Shredding

監査証跡と忘れられる権利の両立

従来のジレンマ

「追記専用の監査証跡」

削除できない

「GDPR削除権」

請求に応じて消去(第17条3項の例外あり)

両立不可能に見える

MAPの解決策:Crypto-Shredding

患者データ

暗号化

暗号化データ

記録

MAP

暗号鍵 → Key Management Systemに安全に保管

削除要求時:

暗号鍵を破棄 → データは解読不能に → 解読不能化(これが「消去」に当たるかは法域・事案による)
ハッシュチェーンは維持 → 監査証跡の整合性は保持

ユースケース

具体的な適用シナリオ

1 医療過誤訴訟シナリオ

フェーズ MAPなし MAP導入時
診断時 AIが「異常なし」と判定 同左 + 判断根拠を記録
訴訟提起 「AIが見落とした」と主張 同左
証拠開示 ログが改ざん可能性あり 暗号学的に検証可能な証跡
原因特定 「モデルの問題か、データの問題か不明」 「モデルv2.1.3の特定条件下での精度問題」を特定
責任判断 曖昧なまま和解 完全性・網羅性を検証できる記録に基づく判断

2 FDAによるPCCP監査シナリオ

FDA監査官

PCCP準拠の確認要求

MAP型の記録が提供しうる証拠(例示)

  • モデルバージョン履歴 ✓
  • 登録済みモデルバージョンのハッシュ(学習データの系譜はVAP-SLEEPの対象) ✓
  • 性能検証結果の改ざん検知可能な記録 ✓
  • 変更承認者の署名付き記録 ✓

監査用証拠の提出完了

3 臨床試験データ完全性

CRO(受託研究機関)

EDCシステム

MAPアンカリング

外部ブロックチェーンにハッシュ記録

システム管理者による改ざんも検知可能

規制当局の査察に向けた検証可能なデータ完全性の証拠

技術仕様サマリー

構想段階のパラメータ ― MAP v0.1.2 ワーキングドラフトと異なる場合はドラフトが優先します

タイムスタンプ精度

ミリ秒(NTP同期)

イベント記録頻度

診断イベント単位

ハッシュアルゴリズム

SHA-256

署名アルゴリズム

Ed25519(将来Dilithium対応)

PHI保護

イベントにPHIを含めない(コミットメントのみ)+保護ペイロードのCrypto-Shredding

ストレージ形式

正規化JSON(RFC 8785)。FHIR AuditEventへのミラーリングは参考スケッチ

保存期間

規制要件に応じて設定可能(通常10-30年)

ロードマップ

MAP策定スケジュール(残りのステップの時期は未定)。MAPは現在 v0.1.2 ワーキングドラフトであり、以降のマイルストーンは未達です。

完了(2026年7月)

MAP ワーキングドラフト v0.1(現行 v0.1.2)

計画中(時期未定)

医療機器メーカー・病院との技術検証

計画中(時期未定)

FDA/PMDA/EMAへの情報提供

計画中(時期未定)

MAP v1.0 正式リリース

計画中(時期未定)

IHE(Integrating the Healthcare Enterprise)連携

計画中(時期未定)

HL7 FHIR拡張としての標準化検討

VAP/VSOとの関係

フレームワーク階層

VAP (Verifiable AI Provenance)

全ドメイン共通の上位フレームワーク

defines & maintains

VSO (VeritasChain Standards Organization)

VAPを策定・維持する標準化組織

publishes profiles

VCP

金融

v1.2 Released

DVP

自動車

計画中

MAP

医療

v0.1.2 ワーキングドラフト

EIP

エネルギー

計画中

PAP

公共

部分ドラフト

MAP策定に参加しませんか

医療機器メーカー、病院、規制当局の方々の参加を歓迎します。

「AIが『がんです』と言ったとき、患者が知りたいのは確率ではない。根拠だ。」

— VeritasChain Standards Organization

"In medicine, trust is not given. It is verified."

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