AI駆動システムのための
検証可能な監査エビデンス

VSOは、VeritasChain株式会社が運営し、技術仕様を公開しています。

高リスクAIおよびアルゴリズムシステムにおける暗号学的に検証可能な監査エビデンスのためのオープン仕様を策定しています。

1 なぜこれが重要なのか

AIおよびアルゴリズムシステムは、金融市場、医療、自動運転車、重要インフラなど、高リスクな環境にますます導入されています。これらのシステムはしばしば「ブラックボックス」として機能し、人間の理解を超える速度と規模で意思決定を行います。

従来の監査メカニズムは、可変ログと信頼ベースの主張に依存しています。このようなアプローチは以下の場合に不十分です:

  • 意思決定プロセスが不透明で再構築が困難な場合
  • ログの整合性を独立して検証できない場合
  • 規制当局が単なる主張ではなく証拠を要求する場合

EU AI法(第12条:高リスクAIシステムにおけるイベントの自動記録)、MiFID IIの記録保持要件、SECの記録保存規則(Rule 17a-4)などの規制フレームワークは記録の保持を求めていますが、いずれも暗号学的な手法や改ざん検知可能なログを要件としてはいません。VSOは、検証可能で改ざん検知可能な監査証跡がこうした記録を第三者が独立して確認できるものにすると考えています。

中核原則:「検証せよ、信頼するな(Verify, Don't Trust)」—監査エビデンスは、システム運用者の主張に依存することなく、独立した第三者によって暗号学的に検証可能であるべきです。

2 VSOとは

VeritasChain Standards Organization (VSO) は、VeritasChain株式会社が運営し、AIおよびアルゴリズムシステムにおける検証可能な監査エビデンスのためのオープン仕様を策定します。中立性は、公開された手続、利益相反の管理、および非推奨方針によって説明されます。

VSOは以下の原則に基づいて運営されています:

  • 仕組みによる中立性: 仕様はCC BY 4.0で公開し、適合性評価はVSOではなく、VSOが承認した適合性評価機関(CAB)が行います(これまでに承認された唯一のCABはVeritasChain株式会社であり、同社はVSOの運営基盤でもあるため、スキームオーナーから独立していません)。非推奨方針は公開されています。運営基盤はVeritasChain株式会社が提供しています
  • ベンダー中立: 仕様は実装に依存しないよう設計されています
  • オープン開発: 技術作業は公開文書とともに透明に行われます

重要な明確化事項:

  • • VSOは特定の製品やベンダーを推奨しません
  • • VSOは規制承認や規制遵守の認証を付与しません
  • • VSOは投資、法律、金融に関するアドバイスを提供しません

3 VCPとは

VeritasChain Protocol (VCP)(現行バージョン:v1.2.0 General Availability。タグ v1.2.0、コミット b23acb266f88df81d960d36d58fb64ceaa0dd5ed。GAマージ 2026-10-08 JST、修正マージ 2026-10-09 JST。VAP v1.2.0 Draft 3とは別です)は、アルゴリズムおよびAI駆動システムの暗号学的に検証可能な監査エビデンスを可能にするために設計されたオープン技術仕様です。

VCPは、アルゴリズム判断のための「フライトレコーダー」として機能することを意図しています—結果だけでなく、それらの結果に至った文脈とパラメータを、独立して検証可能な形式でキャプチャします。

中核技術コンポーネント

  • Merkleツリーと外部アンカリング: イベントのハッシュはMerkleツリー(RFC 6962のドメイン分離ハッシュ)にまとめられ、そのルートはティアに応じた間隔で外部にアンカリングされます(v1.1以降、すべてのティアで必須)。イベント間のハッシュチェーン(PrevHash)は任意です
  • マークル証明: 大規模データセット内の個々のレコードの効率的な検証
  • デジタル署名: 各イベントは署名され、真正性と否認防止を確立します
  • 改ざん検知可能なイベントログ: 履歴レコードへの変更が検出可能になります
  • 第三者検証可能性: 監査エビデンスは元のシステムへのアクセスなしに検証可能です

統合アプローチ

VCPはサイドカー統合用に設計されています—既存の取引システムや意思決定システムへの侵襲的な変更を必要とせずに監査エビデンスをキャプチャすることを目指しています。このアプローチは統合の複雑さと運用リスクを最小限に抑えることを意図しています。

4 何が異なるのか

観点 従来のログ VCPアプローチ
整合性モデル 信頼ベース(ログが変更されていないと仮定) 暗号学的に検証可能(改ざんが検出可能)
検証 内部システムへのアクセスが必要 システムアクセスなしに第三者検証可能
証拠タイプ システム運用者による主張 暗号学的証明
監査範囲 通常は結果のみ 意思決定コンテキスト、パラメータ、結果
変更検出 困難または不可能 Merkle証明と外部アンカーにより検知可能(任意のPrevHashを使う場合は、ハッシュチェーンの断裂によっても検知可能)

5 現在の状況と公開活動

VSOは検証可能な監査標準の開発と採用を推進するための継続的な取り組みを行っています:

  • 技術文書: VCP v1.2.0仕様(General Availability:タグ v1.2.0、コミット b23acb266f88df81d960d36d58fb64ceaa0dd5ed。GAマージ 2026-10-08 JST、修正マージ 2026-10-09 JST。VAP v1.2.0 Draft 3とは別です)、JSON Schema、VAP v1.2.0 Draft 3メタフレームワーク、および関連資料が公開されています
  • 標準化団体との関わり: IETFに5件の個人Internet-Draftが有効です(いずれもワーキンググループには未採択)。ITU-T SG17へのVSOのリエゾン文書はTSBにより返却されました。ISO/IECへの提出は行っていません
  • 研究出版物: ポジションペーパーと技術分析が公開レビュー向けに発行されています
  • オープンツール: リファレンス実装と評価ツール(VAP Scorecard Explorerなど)が一般利用可能です
  • 国際対話: VSOは複数の管轄区域の規制・標準コミュニティとの継続的な関与を維持しています

6 VAP Frameworkとの関係

VCPは、Verifiable AI Provenance (VAP) Frameworkのより広い文脈で運用されています:

  • VAP Framework(v1.2.0 Draft 3): 複数のドメインにわたる検証可能なAI意思決定来歴のための一般要件を定義する上位メタフレームワーク
  • VCP: VAPのドメイン固有プロファイルで、当初は金融サービスとアルゴリズム取引に焦点を当てています

このモジュラーアーキテクチャは、検証可能な監査エビデンスへの一貫したアプローチを維持しながら、自動運転車、医療AI、重要インフラなど他の高リスクドメインへの将来の拡張を可能にするよう設計されています。

注記: VCP以外のドメイン固有プロファイルとして、CAP v1.0およびCPP v1.4(リリース済み)、OAP・MAP(Working Draft)、PAP(Partial Draft)、IAP(発表済み)、DVP・AAP・EIP(計画中)があります。DAPとSMPはドメインプロファイルではなく、分野横断のケイパビリティ(いずれもWorking Draft)です。OAPとDAPを組み合わせた適用例は、AIセキュリティ調査の証拠設計(設計提案・非規範)で説明しています。

7 重要な明確化事項

VSOとVCPの正確な理解を確保するため、以下の点を明示します:

VCPは任意の仕様であり、法的・規制上の効力はありません。また、公認された標準化団体や規制当局に採用されたこともありません。

VCPは規制ガイダンスを構成しません。適用法規への準拠は実装組織の責任です。

VCPの実装は、デフォルトで準拠または認証を意味しません。正式な準拠評価には別途評価が必要です。

VCPの使用は規制当局の承認を保証しません。規制の結果は管轄区域固有の要件と解釈に依存します。

VSOの組織設計とガバナンス原則の詳細については、分散型組織ポリシーをご覧ください。